御坊(和歌山県)

釣り小屋の十数年

 夏といえば海、という年頃が、僕にもあった。ただ、贅沢にどかんと遊ぶというタイプでもなかったし、実際お金もなかった。だから、知り合いのおじさんが釣りに出かけるのに寝泊りする簡易小屋を作るときに手伝ったおかげで、僕はその後このプレハブ小屋を10年以上も毎年借りて仲間と泳ぎに出かけることができた。一番近くにある家でもそこそこの距離があったし、飲んで騒ぐにはもってこいの場所だった。小さなプレハブでごろ寝してご飯を作って泳ぎすぎてバスに乗り遅れて…といった時間の中で僕らはここに来る前より親密になっていた。

  御坊の海水浴場はさほど有名ではないし、車であと1時間も行けば白浜が控えているせいもあって、人がそこそこの多さにしかならないところがいい。あたりも観光化されていないから、港町の雰囲気がそのまま残っていて居心地がよかった。

 ある年、そろそろそこを毎年訪れる年でもないかな、という頃になって、友人と行ってみると屋根が破れて浸水し、床が腐ってそこから草が生い茂っていた。僕らはそこにいちおう施錠して、近くの民宿に2泊した。翌年から御坊に行くことがなくなった僕は、同時に夏になると海を思い出してわくわくするようなこともなくなった。でも、あの潮くさい風を今でもしきりに思い出す。


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↑ 田んぼのすぐ向こうはもう海


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