FUAI XAI


人間世界への入り口

 タイからメコン越えでラオス入りできるアクセス・ポイントとして知られるフェイ・サイは、一言でいえば田舎町である。それ以外の形容がほとんどないと言っていいだろう。タイの小さな片田舎の街である対岸のチェン・コーンから入ると、家屋や商店、舗装道路などが極端に減り、夜がとても暗く感じられる。日が落ちるとトゥクトゥクさえもう姿を消してしまっている。
 ルアンパバーンルアンナムター方面への拠点ともなっているフェイ・サイは、旅行者にとっては止まり木のようなところなのだろうと思う。チェン・コーンで知り合った日本人夫妻に「向こうにも行ってみたいんですが、おもしろいんでしょうか?」と訊かれて答えに窮したこともあった。30代くらいまでの旅行者になら「ものは試しですよ」と奨めることもできるのだが、ラオスは何もないことを楽しめるような人にしか「良いところです」とは答えてあげられない。

 ルアンナムターからピック・アップに揺られて雨の中を帰ってきたときには、晴れていると土埃、雨の間は雨粒と冷気に苦しめられ、乗客が物資のように詰められた荷台からへとへとになってフェイ・サイにずいぶん遅れて降り立った。いつまでもどこにもたどり着かないピック・アップに揺られていると、永遠にこのままなのではないかというおかしな幻想にまで取り憑かれる。そんな行程で、フェイ・サイが近くなったときに家の明かりが見えて、乗客誰もがハッと顔を上げ、いつまでもその光を目で追った。入国の時にはただの田舎町だったフェイ・サイは同じ道を戻ってきたときには人間世界への入り口のように見えた。そして街の人と話すと、そこには確実にタイが近くにあるのだということが分かる人懐こさがそこここに零れ落ちていた。


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↑ 町外れに出る朝市



↑ フェイ・サイ〜ルアンナムター間のピックアップ休憩所
乾季は土埃に、雨季は寒さに悩まされる


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