GEORGE TOWN


 
24時間昼下がり

 私事ながら、この街、というか、ペナン島は僕にとって鬼門である。僕はこの街で奥歯を割り、財布をすられ、警察に軽くあしらわれ、金に困り、レートの悪い換金を何度か強いられ、場末の宿に泊まり、ザックを水浸しにされて丹念につけていたメモ兼日記の字を雨降りのバスのトランクルームでにじませてダメにし、マクドナルドでビッグ・マック・セットをたのんでビッグ・マック抜きでトレイを受け取った。まさしくほうほうの体である。そういう僕に、この街の正確な描写はできない。ただ、この街独特の、24時間すべてが昼下がりのけだるさに包まれたようなたたずまいは好きだ。人々がへんにうるさくない程度に親切なのも居心地がいい。今度、ヴィザの切り替えででもこの街を訪れるとき、どうか鬼門でなくなっていることを願うばかりだ。




コムタとガマ

 ジョージタウンに降り立つといやがおうでも目にはいるノッポで多角柱のビルが見える。それがコムタ。階下の4Fまではショッピング・モールになっていて(ペナン島最大)、1Fはペナン各地へ向かうバス・ターミナルになっているから、旅行者はほとんどの場合、ここの世話になる。また、この近くには各種ホテルや様々な店、屋台が軒を連ねている。ガマはコムタの角向かいにあるショッピング・センター。ここには紀伊国屋も入っている。ガイドブックなしでこの街に着いて、宿探しに行き詰まったとき、たまたまその存在を知って助けられた。また、蛇足ながら書き加えると、財布をすられたのや日記をダメにしたのはコムタ横に着くバスの中で、それを軽くあしらった警察はコムタの中にある派出所で、ビッグ・マックを出さなかったのもこの中の店である。次の訪問時の僕の焦点はコムタ克服!?

●市バスの一大拠点となっているため、アクセスはどこからでも簡単。


ROCK WORLD

 オリエンタル・ホテルに泊まっていると、夜に何やら煌々と光るネオンを見つけ、気になってチュリア通りに行ってみると(イスラム国家で飲酒や売春のご法度なマレーシアでは、こういう明るいの、珍しいのだ)それはディスコ"ROCK WORLD"だった。平日なのに車が続々集まってきて、フロアに誰も踊ってないな、と思ってたらいきなりショーが始まった。ビューティー・コンテストのようだ。女性がファッション・ショーのように舞台をキャット・ウォーク。しかし・・・おかしい。失礼だが、どう考えても?な女性が最大級の拍手の嵐。やがて?さんたちはニシキヘビを首に巻きつけ口から火を吹いてヘンテコな音楽で踊り狂いだす。あああ・・・これはニューハーフ・ショーなのだ。そう、先刻見た超ド級の美人もみんなオカマさんたち。呆気にとられていると、一人で掛けていたテーブルにマレー人と白人の3人組が相席。仲よくなってビールなど注ぎあっているうちに放たれたのが"Are you strait or gay?"の一言だった。そうか、エントランスでスタッフが「今日はスペシャル・デイだよ」と言ってたのはまんざらウソじゃなかったのだ。


極楽寺  lok kek si

 ペナン・ヒルへ行こうとしてバスに乗り、間違って着いた。友人が山の中腹ににょっきりそびえた巨大な観音菩薩像を発見して声をあげたのだが、その像を携えたお寺がここ、極楽寺だった。出店でさらに細くなった参道に人を掻き分け、あまりにも数が多すぎる亀が甲羅干ししている池の縁を廻り、やっとの思いで汗を拭きながら本堂の下にやって来たというのに、友人はそこでカメラのフィルムを切らしてしまい、もと来た参道を出店のところまで36枚撮りを求めに降りた。ただでさえ汗っかきなうえに、今朝から風邪気味な彼と昨晩飲んだ酒の量を考えると、「ナー・ソーン・サーン(かわいそう)」というタイ語がぴったりに思う。「デジカメが欲しいなー」と言った彼の気持ちはしみじみするくらいよく判る。
 友と連れ立った旅は、この年齢になるとなおのこと愉快だ。寺を写し撮るアングルを探し合いながらファインダーを覗き込んだり、「ガンダーラ」を歌いながら寺の急な石段を上ったり、友人が向けてくれたカメラに向かって高所から落ちそうになっている真似をしてみたり…そして何より、しんどさを分け合うことが心地よい。
 山門が閉まったため、観音像に近付くことはできなかった。そして帰途では参道が出店のところでシャッターを下ろしていて先に行けなくなっていた。ふんだりけったりなハプニングを笑い合いながら、コムタへ戻るバスの車内の座席にどっかと腰を降ろす。鬼門のペナンは僕だけではなく彼にまで飛び火してしまったようだが、彼にとっても今回が珍しくいいペナンだったことが、僕にも彼と同じだけ感じられた。極楽寺は僕らに試練を与えながら、ちょっとした修行を垣間見させてくれた。

●コムタから130番バスで終点下車。


シーサイド

 夕方の浜辺に人が出てくる姿を見ると、ほっとする。夕涼みのおじさん、おばさんもいれば、下校の寄り道の学生たちもいる。コーンウォーリアス要塞のすぐ北隣一帯の浜辺には散歩道があって、その日はそこに本当にたくさんの人たちが建国記念日を祝って広場に集まり、その骨休めに海を背にして腰を降ろしていた。イスラムの女たちはカメラを嫌がるだろうから、うっかり向けることはできない。本当は絶対に最高の被写体なのだから、撮らせてはほしいのだが、それは彼女らともう少し何らかの接点があって親しくならないと、僕にはできない。
 もちろんここはマレーシア。チャイニーズもインディアも溢れている。さあ。さっきから暑くて大汗をかいているけれど、もうちょっとだけ歩いてみるか。

●コムタからジェティー行きバスの終点近く。コーンウォーリアス要塞を目印に下車すぐ。


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footprints

2004年
オレンジのライトが優しい
大仏像が遠くからでも目立つ
岩に刻まれた祈り
高台から見たペナン
元旦のロープウェーは大混雑で乗れなかった
美味のスチームボートを食す
スチームボート屋さん
コムタは街のシンボル
紀伊國屋もある百貨店ガマ
近郊へのバス車内
夜の通りも整然としている
ジェティー(埠頭)前のバス停
夕日が沈んでゆく
ジェティー(埠頭)のフェリー
英国統治時代の面影
要塞跡
海は大してきれいではない
夜市が始まろうとしている
1998・2000年
ニワトリ家族の結束は固い
雨にも情緒ありの街
マレーシアの夜はタイより落ち着いている
「グッド・ルッキン」とはあまりに直截な名前…
グッド・ルッキン外観
歴史を感じる國泰旅社
バーもある北京旅社
イスラム圏でのアルコールは高値

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