SHINGAPOLE

 
テーマ・パーク国家

 深夜の国境越えバスで、初めてシンガポールに入ったとき、窓の外では音のない稲光りが夜空を赤紫に照らし、なまぬるい風が吹き、サバンナのような植樹地の向こうに綺麗で機能的に見えるけれどけれどこじんまりとして単調なフラット群が見えていた。テーマ・パークだな、と、そのとき思った。ここは、まるで映画のロケのために作ったような手触りの街なのだ。
 そして、その街では中国系、マレー系、インド系の老若男女がひざを突き合わせてジョークを飛ばしあっている。リー・クァンユー元首相が徹底的に考え抜いて作り上げた合理的で調和のとれた公園国家。それをオーヴァー・プロデュースな箱庭と言う向きも、理想的なバランスを造り上げた「政治」の希有な成功例と取る向きもあろう。ただ、アジア=貧困、みたいなイメージを今も抱いている方にはぜひ、この国の、ハッキリと目に見える自然と人間との調和、民族融和の形を見てほしい。




セントーサ島

 品川水族館のような180度視界の開ける水槽を見たことがなかった僕は、ウォーター・ワールドを見に行くためにセントーサ島へ向かった。少しでも長くロープウェイに乗るため、マウント・フェーヴァーからスタート。信じられないくらい高い位置をゴンドラに揺られる興奮とともに島に入った。また、ウォーターワールドは予想を上回る水槽の大きさで、魚の種類も数も半端ではない。入り口に魚の背を撫でられるコーナーがあって、当時はこうしたじかに触れられる水族館というアクティヴな部分に鼻息を荒くした。
 しかし、セントーサ島は島まるごとテーマ・パークとしてできあがった大遊園地である。考えてもみてほしい。僕のような一人旅で、島内を巡る列車に揺られても、本物より本物らしい風格のマーライオンを見ても、それがどうだというのであろう。ここにはないが、例えば一人でジェットコースターに乗って面白いのだろうか? 一人だと、声を張り上げるのでさえためらわれそうだ。そして、それは何もセントーサ島だけに限らず、シンガポールという島全体がそうだったのだ。

●マウント・フェーバー、またはLRTハーバーフロント駅よりロープウェイで海を越えてアクセス。または、同駅よりフェリーでも渡れる。


チャイナタウン

 もっと現実の中華街的なムードを求めるのなら、ここに足を運んでもあまり意味はない。今のシンガポールのチャイナタウンは、日本の横浜、神戸、長崎のそれよりもっとずっと、シュガーコーティングされた見世物のためにある。それならばそこいらのホーカーズでお粥でもかき込むほうがよっぽど中華世界を体感できるだろう。
 ただ、おとぎの国を散歩してみるのも悪くはない、という向きにはぴったりだ。中国人が中心を固めた政府がプランを練って、本当の中国人が店を実際に開いているのだから、テーマパークよりは現実味もある。彼ら・彼女らが自身の文化の何をデフォルメし、何をショーケースとして並べてみたいのかがよく判る。屋台が禁じられたシンガポールにあって、ブギスのホーカーズがビル内に屋台を模して配置し、一時期人気をさらった上を行くように、チャイナタウンではテンプル・ストリートの短い区間に限定して屋台を復活させてもいる。ただ、その通りの名となっている「テンプル」が中国寺院ではなくて、シンガポールで最も古いヒンズー寺院であるとされるスリ・マリアマン寺であることが、シンガポールらしさを最も主張していることの一つだったりするが。

●LRTチャイナタウン駅下車


リトルインディア

 その名のとおり、このインド人街はそう広い区域ではない。しかし、リアリティーにおいてはチャイナタウンより幾分かこの地区に歩がありそうだ。他国に居住しながらも自国の文化を崩さないのはチャイニーズにしてもインディアにしても共通した姿勢なのだが、それでも中国人はもともと商売が上手だし、相手の出先を心得て動く器用さも持ち合わせているから、その土地土地にあわせた事情でチャイナタウン形成の在り方も変えてきたところが大きい。比してインディアタウンには、とにかく底に通ずる精神性のようなものを感じる。自己主張の方法論の違いが見える気がするのだ。
 このリトルインディアだって、それはたいそう箱庭化されてはいるし、建物やストリートの感覚だってチャイナタウンと殆ど同じだ。が、タミル語を話す彼ら・彼女らは我々に商売っ家を滲ませた媚を売ってはこない。そこにリアル・ライフを垣間見る。

●LRTリトル・インディア駅下車


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footprints

2004・2005年
2階建てバスが旅情をくすぐる
サマーセット駅近くで見たデコレーション
オーチャード周辺は中心街
ニー・アン・シティーのスケールはとにかくでかい!
高島屋も含めた総合ショッピング・コンプレックスである
ブギスのショッピング・モールには西友も入居
チャイナタウンは毎日がハレの日
歩行者天国に並ぶテーブル
趣味のよさそうな中国インテリア雑貨店
MRTチャイナタウン駅には漢字表記も
同じくリトル・インディア駅にはタミル語表記
インディア・タウンはカラフル
布も多種多様
インド寺院の入り口にて
英国の面影ある建物も
下町風情の食堂
クリスタル・ジェイドは大きなチェーン店
夜の食堂は賑やか
ジェンガみたいに崩れないだろうか?
MRTは郊外では高架鉄道に
MRT車内の様子
2両連結バスとタクシー
ロープウェイはセントーサ島行き
ビンタン島・バタム島方面へのハーバー・フロント
チャンギ空港とMRTを結ぶ通路
チャンギ空港のイミグレーション
チャンギ空港の構内
チャンギ空港内の免税店ゾーン
煙草やマッチのポイ捨ては、シンガポールにもやっぱりある
1998年
人気のいったん切れたニー・アン・シティー
ラッフルズ・シティーの吹き抜け
整備された橋
ホーカーズ(集合屋台)がいたるところに


シンガポール瓦版



↑ バタム島(インドネシア)へ向かうペンギン・フェリーのシンガポール側チケット



↑ ペンギン・フェリーのインドネシア側チケット



↑ アジア一の空港との呼び声高いチャンギ空港の日本語ガイド
本当に使い勝手のよい空港だ



↑ シンガポールのHMV(CDショップ)
この犬と蓄音機のマークには見覚えが…



↑ シンガポール航空のチケット


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