月下の酒宴 台湾に惹かれて1年に2度も訪問したことを知った旧友のお母さんは、「ぜひ日月潭にも立ち寄ってほしい」と言った。彼女は台湾先住民族であるサオ族の頭目の血をひき、日月潭の出身だったからだ。 日月潭のほとり、徳化社にたどり着くと早々に、酒盛りが始まってめくるめく歓待を受ける。「あなたのお父さんも、昔、ここへ来たのよ。よく似てるよ」。その話は、父からも聞いたことがある。その時父が受けたという大歓待を、年を経て、僕が体験している。月が綺麗な夜であったことも含めて、とても不思議な気分だった。 帰りがけ、おばあちゃんが「これを娘に渡してほしい。娘はこれが大好きなんだ」と、大きなお菓子の包みを僕に託した。もちろんそのお菓子は彼女の娘である僕の旧友の母親に手渡したが、思ったよりもうれしそうではなかった。それよりも、彼女は自分の従妹に会った感想を僕に求める。「いや、ふたりとも綺麗な人でしたよ」「そう!? じゃ、結婚しなよ」。幼稚園の頃から旧友とやんちゃをして迷惑をかけてきた彼女が、日本という異国で暮らしているのだということを、僕はそのとき初めて強く感じることができた。 「俺の時もそうだったよ。大きなお土産の包みを渡されて、これをあの子に、って」父が苦笑いする。そんなにも長い間、サオ族は独自の時間の中で生きているのか。だが、ふたりの従妹の姉のほうは、上海でクラブの経営をしていると言っていた。その瞳の中には僕のような冴えない日本人は映っていなかったように思う。 |
日月潭(ズー・ユエ・タン) |
徳化社 |
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↑ 地元の人も売っているものが何なのか分からなかった |
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