SATTAHIP

無名の街から釣りの拠点に

 バンコクに住み始めて初めて、職場以外で在タイ者の友達ができた。彼も僕とほぼ同じくらいの在タイ歴で、お互いの職場の社長同士が知人であったことから知り合い、つきあいも急速に深まった。当時ほとんど情報のなかったジェーン・ワッタナーの廃墟状態だったニュー・タウンを探したり、日本人に興味を持つタイ人女性たちに手作り料理をふるまってもらう即席パーティーにともに招かれたりした。そして、彼と最後に出かけたのが、このサタヒープだった。まだタイに興味津々僕らにとって、あまり多くの日本人に知られていなさそうな場所だったらどこでもよかった。パタヤーの先にあり、タイ湾の入り口となる岬というだけで、僕らには充分だった。

 サタヒープはその場所柄、岬は海軍の所有地となっている。しかし、その近くに一艘の軍艦が観光用に開放されており、子どもたちは大はしゃぎ。市場には海産物が多く、どれを見ても新鮮だ。街の真ん中にある中国寺院も目立った存在である。しかし、それ以外にどうだというと、特別なものはなさそうだった。

 ある日突然、友人は僕らの前から姿を消した。勤め先からノウハウや顧客を持ち出した彼は、まったく同業種の会社を起業し、以前の勤め先にかかわるすべてを断ち切ったのだった。それがタイによく見られることなのだということを、僕もうすうす知りかけていた頃だった。そして、その彼の職場も潰れてしまい、彼自身もタイを撤退したと風の噂に聞いた。かくいう僕自身も、一度日本でやり直そうと帰国もした。

 そして今、現地採用の在タイ日本人は、以前のような覚悟を伴った「タイに住む」という決意を経ずに、ワーキング・ホリデーの感覚で暮らし始められるような状況になった。そんな在タイ日本人の間で、サタヒープは釣り船の基地としてある程度名の知られる地名となっている。


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footprints

軍艦を展示してある
市場のカブトガニ

天然記念物なのだが、タイでは普通に食する
市場のコウイカ

タイ湾入り口の岬だけあって、海産物は新鮮で豊富。
いろんな魚が

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