ARANYAPRATHET

国境での落差はエンジェル・フォール級

 カンボジアのポイペトと国境を接するアランヤプラテートは近年、その地域性と密着した点に注目されてわれわれフォーリナーにも知名度があった。以前はカンボジア難民キャンプが大々的に広がっていることや、入国できない代わりにこの町を足がかりにカンボジア取材をする人々が多いことで知られ、空白期間を経て97年にはカンボジア陸路開放の報せで旅行者は沸いた。その後、旅行者には陸路でアンコール・ワットを目指す際の入国ポイントとして、在タイ者にはヴィザ出国をするのに最もバンコクから近いボーダーとして利用されている。だから我々はアランヤプラテートの名を聞くと反射的にカンボジアを思い浮かべるのだが、今現在ではこの町にカンボジアの匂いを求めるのにはいささか難がある。少し以前までは他のタイの地域に比べ貧困者が多く、うらぶれた重苦しい雰囲気がぷんぷんしていたと聞くが、その面影はもうほとんどない。そして、町にカンボジア商品を置いているような商店もほとんどないのだ。まだこれならハート・レック村のカンボジア国境のほうがカンボジアと隣り合わせている雰囲気を漂わせているといえるだろう。
 だが、あの国境の風景はやはり多くの人が実際に足を運んで見たほうがいいのではないかと思う。穏やかなタイ側の町の様子があの国境に近づくと一変する。カンボジア側から流れてくる人の圧倒的な数、その身なりや目つき、粗末なリヤカー、急になんでもかんでもぼろうとする人が増える荒んだ空気。カンボジアの中に入ってしまえばそんな情景にも慣れてしまうのだが、あの国境の違和感こそが、僕ら島国国家の生まれ育ちの人間にはより鋭利に見える「国境」という不可解な現実の照射だ。


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