KHON KAEN

おじいさんの写真に見えるもの

 噂どおり、広い道路に往来は少ない。チェンマイから10時間かけてやっと辿り着いた、僕にとって初めてのイサーンの街は、開けたばかりのように新しくて眩しかった。作物の育ちにくい赤土の貧しい土地だというイメージが先行していたが、この街は明るく清潔で、空気も澄み渡っている。

 白昼のメイン・ストリートで道を尋ね、そのおじいさんの視力がほとんどないことに気づいた。悪いことを聞いてしまったな、と思ったが、「レンタカーはいらないかい?」という返答。彼の指先を目で追うと、確かにレンタカーのポスターが貼られている。
 運転免許証を持ち合わせていないことを知ったおじいさんは、「腰かけなさいよ」という素振りで椅子を指さし、コップ一杯の水を出してくれた。日本人が珍しいのか、あれこれ声をかけてくれるが、残念ながらほとんど意味がわからない。
 記念におじいさんの写真を撮らせてもらうと、彼が「カメラを貸して。撮ってあげよう」とジェスチャーする。案の定、彼の撮った写真は、かろうじて僕の首から上が写っているような按配だったが、ハンディをものともしない、屈託のない彼の笑顔が蘇ってくる。彼の写真は、そのフレーム内に写っていないものまで見せてくれる素晴らしい一枚だったことを、僕はそののちに知ることになる。


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footprints


デパート前にて
この街にも開発の波が押し寄せている

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