NEW OREANS


アメリカの異端児

 祭りと音楽が盛んで、食べ物がおいしくて、民俗文化が入り交じっている街が好きだ。アメリカの場合、ニュー・オーリンズがそれに該る。バーボン・ストリートを濶歩すれば火を吹くようなブルースやロックやジャズがバーから洩れ飛び出し(ここニュー・オーリンズはディキシー・ジャズ発祥の地で、ブルースやロックにも特別なスタイルをもつ)、クレオールやガンボといった異種文化混交がもたらした料理が好まれ(アメリカには珍しく生ガキが名物でもある)、かつてはヴードゥーと呼ばれる呪術的である種サイケな宗教が信仰され、世界に誇るマルディ・グラ祭では一年を費やして丹念に仕立てられた民族衣装で街を人々が練り歩く。その一方で、豪邸の立ち並ぶオーデュポン・パークあたりでは犬を連れた散歩の人やランニングにいそしむ市民の姿が。その差異が好きだ。
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ニュー・オーリンズのいかりや長助

 セカンド・ライン・ビートの伝統・ジャズの発祥地・リズム・アンド・ブルースの発祥地・クレオール・ミュージックの中心地・ニュー・オーリンズ・ファンクなど、スゥイングする音楽にはこの街の影がちらちらすることが多い。もちろん僕も、生ガキとパスタで腹ごなしをして、開けっぱなしのバーのなかでもとびっきり元気な音を聞かせる店の入り口を、意気揚々と入ってゆく。店内ではどこかのカップルがいきなり二人だけで踊りしたりして、誰かがそれを囃したりしている。バンドはオリジナルらしい曲に混ぜて、「プラウド・メアリー」なんかもコピーしていた。リズム隊のグルーヴ感も威勢がいいが、いかりや長助似のヴォーカルは「爆発」と呼んでいい迫力でマイクに向かって、熱さをぶつけまくっている。ステージと客のフロアを隔てるために渡された横木から身を乗り出し、汗をほとばしらせる姿に、僕は何度もチップを弾んでしまった。でも、チップとはもともとそうしたものだろう。
 「いつか、日本にも来て演奏してよ!」
 「オーライ!」
 バーボン・ストリートの夜は熱い。


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