SAIGON
Ho Chi Minh City


未来のプノンペンを見た、その名はサイゴン

 夢を見た。夜のネオンも煌びやかで、装いも新たなビルが雨後の筍のようにニョキニョキ姿を現す未来のプノンペン。2010年になってようやく初めて訪れたサイゴン(ホーチミン)は、頬をつねりたくなるほど、あのカンボジアの首都に似ていた。
 なるほど、仏領インドシナとしての共通の過去が街の造りをそっくりにさせているというのは正解だろう。また、所得から得られる個人的交通手段としてバイクが多いのも頷ける。華人の力が強いこともあろう。それでも直ちには首肯できないくらいに、サイゴンは発展したプノンペンだった。浦島太郎がクメール人なら、彼はサイゴンを玉手箱の煙の向こうに見ただろう。

 それにしても、この混沌ぶりはどうだろう。バイクと車・自転車・歩行者がロータリーや辻で、よくもこんな中を事故も起こさず行き交いあえるものだ。それがこれだけの都会で日常となっていることに驚く。バンコクに暮らす僕でも、正直たじたじである。ヴェトナム料理の繊細さを横目に街を歩いていると、ロータリーから放射状に延びる通りのように、答えはどんどん乖離していくばかり。
 あ、これは僕ら男側から見て女性が謎なのとどこか似ている。少しだけ、この国が数年前から女性に人気であり続けている心理に近づいたような気がする。




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サイゴン・ピープルの肖像

 ヴェトナム旅行に及び腰だったのには、タイとその近隣国、なかんずくカンボジアで見かけたヴェトナム人たちの印象がよくなかったせいだ。男はやる気なし、女はつんけんしている、そして男女とも、商売になるかならないかで態度を一転させる。僕がひとり旅をするのは、そこにいる誰かの思い出が残るかどうかに尽きるので、正直なところ、東南アジアでは「機会があれば行ってみよう」程度の国だった。2010年になってようやく、日本帰省の乗り換え空港となったので、ストップ・オーヴァーしてみたというわけである。食事と写真に目当てをしぼりこんで、さあ、タンソンニャット空港を出てみよう。

 4月だが、バンコクと比べれば、朝夜などかなり涼しいので、思ったよりは外出しやすい。だが、細かく巡る通りを越えるとき、常に突っ込んでくるバイクや車を気にしなければならないので、散歩にはあまり向いていないだろう。ここでは、車優先社会のバンコクで暮らしてきたことがすごく役に立つ。
 それにしても、何かこう、捉えどころがない。短い滞在で安直なことを言うのもおかしいが、このサイゴンという地の魅力のようなものが見えにくい。たとえば街を歩いていて声をかけてくるバイク・タクシーのおっちゃんや、マレー人だと自己紹介するおばちゃんがいる。親しげに声をかけてくる彼ら・彼女らはあまりに典型的な詐欺での常套句を述べるので適当にあしらうのだが、その声がかかる頻度を街の危険性と考えてみると、それに見合ったこの街の華のようなものが感じられないのだ。混沌があれば、整然とした日本では見つけにくいような煌めきもそこに感じられることが多いはずなのに。

 ホテルで「海鮮料理のおいしいレストランはない?」と尋ねてみた。レセプションの雰囲気がいいことで宿をとることに決めたホテルだったのだが、スタッフ同士の相談中に何度か、眉根にしわが寄ったりする。どうしてなのだろう? そして、食事から戻って僕が満足だったことを聞くと手のひらを出して「チップ!」の冗談。この手の、金銭がらみのジョークはほかでも聞いた。
 かと思えば、ヴェトナム航空でバンコク戻りの時間変更を申し出ると、明らかにやる気のない対応。僕の受け付け前のチケット購入客への丁寧な対応とは大違いで、自分が嫌われているのかと訝る始末。でも、たぶんそうじゃない。金が動いたかどうかがその分水嶺なのだろう。
 バンコクでタイの微笑みが、金銭がらみではたらいたりすることもままある。眩しい笑顔に惑わされて財布をはたくこともあるだろう。サイゴンではその点で、もっとわかりやすくてストレートだと言えるのかもしれない。でも、人間的な魅力ということでは、僕の当初の印象は残念ながら変わらずじまいだった。

 ヴェトナムの本当の姿に触れたような気がしたのは、夜のサイゴン大教会周辺。夕涼みというには少し遅い夜9時ごろ、教会前の公園や、その横の中央郵便局の周辺に、老若男女が集っていて、穏やかな熱気を放っている。誰もが緩められた時間をゆったりと泳ぐように、自然で健康的な表情をしている。恋人どうしと思わしき二人は、この宵闇よ永遠に続けとばかりに、限りなく甘いシェルターを作っている。周囲をあまねく照らすオレンジの街灯は、彼ら・彼女らのひと時の憩いをふんわり包みこんでいた。




footprints

街角の天秤屋台
宵は路上で箸を運びつつ語らい
結婚披露宴だろうか?
柔道を習っている子ども達
雲霞のごときバイク
お疲れのようで…
夜のサイゴン大教会周辺はデート・スポット
高級百貨店も登場
市場の近くで軽く一皿
ヴェトナムは魚介類が豊富
サイゴンきっての市場、ベンタイン
ベンタイン市場の小物は大人気
中華街チョロンには生活のパワーが
国営百貨店もモダンな雰囲気に
サイゴン中心部でも鶏が元気に
ホーチミン像のそばに咲く花
戦争証跡博物館の裏手の戦車と、のんびりしたおじいさん
サイゴンにはメコン支流の川が多い
バイクのパンク修理も路上にて
味を出している民家の壁
フォーは日本人には納得の味
魚介類で夕食を
ヴェトナムといえばフランス・パン
サイゴンで最もおいしかったのはクウィティアウ
町の食堂で腹ごしらえ
有名店ゴック・スーンの貝料理
ホテルで紹介してもらったレストランKY
ゴック・スーン・レストランの入り口
フランス・パンで有名なニュー・ラン
中央郵便局前に集まる人々
街外れのヴェトナム寺院
クメール寺院も存在する
ヴィンギエム寺はサイゴンで最も有名な寺院
市の中心部にある寺は質素な造り
下町の一角にも高層ビル建設の槌音
アジアのどこにでもある、日本のモノマネ

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