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レヴュー08

書籍    みどりの守り神(中公文庫コミック盤:『創世日記』所収) − 藤子・F・不二雄

雪山に墜落した飛行機の二人の生存者がサヴァイヴァルの末、東京にたどり着くとそこはジャングルと化していた。某国の研究していた細菌兵器の管理ミスで細菌が拡散し、地球上の動物が死滅していたためだ。街には人も動物もまったくいない。事実を知って生存者の青年は気がふれ、少女はだれもいない我が家で手首を切った。しかし偶然通りかかった男性に助けられ一命をとりとめる(ほかにも生き残った人間がいた!)

その以前に、少女と青年は下山の道中、何度も不思議な体験をしていた。腹ペコでフラフラ足の向くほうに行くと果実があったり、川でおぼれるとツタが絡まって水から引き上げられたり。―――それは、植物の進化のためだった。飛行機墜落後かなりの年月がたっており(墜落が雪山だったので生存者は冷凍保存されていた)、その間に動物と相互依存してきた植物が、急激に減った動物を保護し育成するために意志を持ち、運動できるようになっていたのだ。そして、どうやら,低温の地では細菌が繁殖力を持たなかったことが分かり、同じく雪崩に遭ったため難を逃れた男性と、少女は生き残った人々を探しに北へ旅立つ。

現代社会。人間の愚かな知恵は人間をどんどん息苦しくさせ、自滅へと追い込む。それでも(人聞を含む)動物を必要としている植物。極限状態にあってももの言わず、動物が生きるために「与えつづける」姿が胸をうつ。その共生への奇跡を作者は<守り神>と題した。たまごっちを「どうやって殺すか」で会話のはずむ子供たちの目には「オモロくない」話でしかないかもしれない。そして、あなたが日々の暮らしをヴァーチャル・ゲームだと捕えていたとしても、僕たちはこうしてただ黙々と文章を書き続ける。

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