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レヴュー11

音楽

林蒙(リン・メン)と黄小琥(コウ・シャオフー)

台北の忠孝東路四段(チョンシャオ・トンルー・スーティエン)に近いライヴ・ハウス主婦之店(ジュプーチーティエン)は、林蒙がもう歌い出していた。ひたすら元気な彼女は、MC(曲間のトーク)でさかんに観客の笑いを引きだしている。ステージ・サイドに運よく座れた僕を目ざとく見つけた彼女は"Are you Japanese, Chinese, English?"と来る。店の中の視線がいっせいに僕に集まる。気の効いたジョークも思い浮かばず、"Japanese."と答えた僕に、彼女は"Sorry, I know about Japanese, Honda, Sony, Suzuki, Toyota.スイマセン"。観客は爆笑だ。続けて、彼女はギタリストに日本の印象を求める。彼は「フンッ!」という表情をして見せ、すぐにあわててステージから逃げ出すフリをする。みんなの喝采。僕も笑ったが、後になって思い出せば、きわどい冗談だ。

つづいて登場の黄小貌は小柄な人だが、どこからあんなスケールの大きい声が出るのだろう。貫禄たっぷり。アルトの歌声が好きな僕にはこたえられないステージだった。話しているとき以外は不機嫌そうに見えるが、一見クールな彼女のMCにまたもお客さんは大爆笑。台湾の人達は楽しむのがうまいな。

二人のテープを買ってきて今でも家で聴いているけど、やっぱり彼女等の歌はライヴがいい。食べ物も音楽も、その土地で楽しむのが基本、ですね。

美術

瑞芳(ルイファン)の町

本来なら若いアーティストが移り住んでいるという九?(チュウフェン)の現状レポートでも報告すべきなのだが、なにぶん我々に残された時間はあまりに短く、また、その拠点のひとつに思える九?文史工作室(チュウフェン・ウェンシー・コンツォシー)は店に誰もいなくて、絵葉書やお土産を買い求める人のためにお金を入れるようにかごが置かれているだけだった。

電車に乗り継ぐためだけに出てきた瑞芳の町は、そこに住む人々の暮らしが見えてくるようだ。観光ズレしていない市場や屋台のおじさん、おばさんたちの眼差しは柔らかく、佇まいが落ち着いている。市場の横手にある短いアーケードを抜けたところに門扉のように立てて置かれたオブジェのようなものがあって、それは同じ種類のビールやジュースの空き缶を集めて、ただビニールでくるんで円筒形や四角柱に固定したものだった。モールやリボンがかけられているものの、ごちゃごちゃしていて美しいとは言えない。だが、それがこの町に住む市井の人々の雰囲気をよく表している。人の温もりがある。ちょっとしたところに、それらしさというものはある。

まぶたを閉じれば、その町で今頃、野良犬が電柱に片足を上げている様が浮かぶ。

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