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スローガン  
 映画の冒頭、いきなり始まったスリルとスピード感あふれる西部劇みたいなシーンに誰もがぽかんとなった。そういう内容の映画じゃないことは、わざわざ京都みなみ会館まで集まった観客なら知っていることだったからだ。そして、強引な展開で映像は髭剃りシーンに変わり、けっきょくは「男の身だしなみ、アフターシェーブ・ローションには○○!」みたいなことになって、みんな爆笑。西部劇を模したCM撮影、という設定だったのだ。
 90年代の目で見てもおしゃれでキュートな映画だったし、セルジュ・ゲンズブールもジェーン・バーキンもすごく活き活きしていた(二人はここで出会って大恋愛になるのだから、当然か)。透明球型のレコード・プレイヤーとか、同じく透明な箱に入れられた電話だとか、近未来に設定したフューチャー・モダンな小道具も効いていた。が、僕にとってこの映画のハイライトは、映画の冒頭シーンでみんなが声をあわせて笑ったことだった。老若男女が集まるハリウッド映画ならまだしも、「スローガン」は単館上映で、90年代ポップ・サブ・カルチャーのコアな部分を感じるような10〜20代の若者が集まるような映画だったから、素直にこぼれた笑い声に、僕はその後もずっとリラックスして、そこにいるみんなと気持ちを分け合うように映画を見続けることができた。
 セルジュ、ジェーン、僕らもあんたがたの幸せが伝染しちまったみたいだよ。
 


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