スパイダーマン  

 一人で映画を見に行ってもタイではあまりさびしい思いをしない。観客の皆がアクション・シーンでは嬌声を上げるし、ギャグには笑うし、ハイライトでは涙するからだ。
 実際のところ、スパイダーマンはそんなに褒められた作品ではない部分もいっぱいあったように思う。ストーリーは単純だし、主人公の親友で敵の息子でもあり、なおかつひそかに思いを寄せていた女性と恋仲になる青年という重要な役どころの青年の設定が甘く、それにこんなことを言っちゃあ可哀想だがヒロインがあんまり可愛くない。だから、僕はこの作品をタイで見ることができてよかったと心底思うのだ。ビルとビルの間を蜘蛛の糸でターザンよろしくすり抜けてゆく画像のスピード感やダイナミズムに対して「よくできてるなあ」なんて日本人的感嘆からではなく、劇場がジェットコースターになったかのような「わぁ!」「おーっ!」と絶えない歓声に煽られて素直に画面上のスリルを呑み込むことができた。そうやって見てみると、なんだ、やっぱりハリウッド映画もおもしろいんじゃないか。
 主人公がスパイダーマン化する前と後との落差の演じ分けも非常に秀逸。さすがは「語らずに、言葉より雄弁に情緒を伝える俳優」の異名を取るだけのことはある。イントロダクションのオールド・アニメ的なテロップにもワクワクするし、個人的に好きなのは、スパイダーマン化した朝に家の階段を勢い余って駆け下りるだけではなく壁にまで飛び上がってしまうシーン。よく見ると解るのですが、あの部分は合成ではなく主人公の実演です。すばらしい。
 


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