-雑誌・雑誌別冊-

ミーツ・リージョナル   京阪神エル・マガジン
 「Lマガジン」は関西専門の「ぴあ」みたいな雑誌である。また、こういった雑誌のはしりは「ぷがじゃ」の愛称で親しまれた「プレイガイド・ジャーナル」で、京都の学生たちの発案からの創刊だったから、関西にはサブカル的な「街遊び」の感覚の先駆的なところがあったのだろうと思う。だから、街遊びを情報としてではなく、もっと街らしくカットアップした取材記事で構成してゆく雑誌の需要についても高かったのだろう。
 「ミーツ・リージョナル」は、おそらく「東京ウォーカー」や「関西ウォーカー」の特集欄とまったく反対の発想で作られている。これにはたぶん、大阪人の気質が大きく影響している。ミーツには何号か以前に見た店がまた掲載されている、というようなことがしばしばある。京阪神が関東圏ほど広くないせいもあるが、これは編集方針として、自分たちが本当によいと思う店しか載せないからだ。ちゃんと取材をして特集記事を組んでも、そこから幾ばくかの広告料金も取って広くいろんな店を掲載するという資本主義に則ったやり方は真っ当なのだが、それでは「本当によいもの」志向が強い京阪神の読者にいつか見限られることを編集部は強く感じているのだろうと思う(ことに京都人の質へのこだわりは尋常ならざるものがある)。
 1990年の創刊以来、ミーツには本当にいろんな事を教えてもらった。どうして「ガキの来ない店」じゃないと本当にいい店にはなれないのか、「かっこいい」というのは存在するものなのか、適度な距離もとりながら時代とともに呼吸するとはどういうことなのか、消費するだけじゃない「街」とはいったい何なのか。僕も一緒にその時代を駆け抜けた。
 そしてなんでもありの時代を迎えた00年代。僕はすぐにタイでの生活をスタートし、舞台を変えるとともに、価値観も変えた。


ミュージック・マガジン   ミュージック・マガジン
 僕がポピュラー音楽を積極的に聴くようになり始めたときにはまだ、音楽としてのクオリティーによる序列みたいなものが実しやかに公言されていた。曰く、邦楽よりも洋楽が優れており、歌謡曲よりもロックやニュー・ミュージックが優れているとか、そういったものだ。この観念は90年代に入ってCDが新譜・旧譜並列で店頭に並び、DJがネタとして自身の編集感覚で古今東西さまざまな音源を引っ張り出し、クリエイター側での異種交配もさらに深化し、時間軸や空間軸とともに品質としての軸も一筋縄では評価ができないようになって一気に崩れた。
 ミュージック・マガジンは70年代に、闇雲なパワーを撒き散らしつつもまだ混沌としていた洋邦の音楽情報を集め、そのクオリティーを論じるという姿勢をひとつのポイントとして創刊された。僕がレコード店の店員さんに奨められてこの雑誌を手にとるようになった頃には、まだその気風が強く残っていた。そして、あの頃にはまた、そういう手引きになるような意見が必要だった。時代はまだ、レンタル・レコードが普及し始めたあたりのこと。LPを1枚買うことがまだ贅沢の範疇に入る時代だったし、レコードが消耗品である以上、店頭試聴などもほとんどなかったから、TVやラジオで耳にする以外にはこうしたしっかりとした質の高低を書き表してくれるひとつのメジャーが必要だった。この雑誌を読んで、僕はどれだけのLPを求めたことだろう。
 時代は変わり、ミュージック・マガジンのあり方も変容した。それでも、本文の記事内容自体の「質」は相変わらず高い。数ある音楽雑誌よりタワー・レコードが出している"bounce"(フリー・ペーパー)のほうが面白いことも多い中、同誌の志の高さに驚く。


沖縄・離島情報   林檎プロモーション
 この季刊誌はその名のとおり情報系沖縄諸島ガイドブックで、各々の島の見所や名産品などを調べるには他の様々に出揃った旅のガイド書を当たるほうが効率がいいだろう。「沖縄・離島情報」のすばらしいのは、フェリーやフライトの時刻表、名所やライヴハウス、芸能小屋、キャンプ場、マリンレジャー、レンタカーやレンタバイク、レンタサイクル、病院、宿泊施設、ボウリング場やゴルフ場などの開店(開園)時間や料金、問い合わせ先などのデータが細かく、かつきっちり整理されて掲載されていることだ。小さな離島についてもフォローされ、使い勝手がすこぶるいい。時刻表や地図を眺めるだけでもヴァーチャル・トリップできる人にはうってつけのプレ・トラヴェル書でもある。
 かつてのバックナンバーを整理していたら、本土デビュー前と思わしきキロロによる沖縄案内が巻頭に出ている号を発見した。今では本土からの移住者が引きも切らない沖縄だが、この頃にはそれでもまだリゾートとしてのイメージだけが先行していた。「沖縄・離島情報」が奮闘していた頃の沖縄が懐かしくてたまらない。


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