Ustad Nusrat Fateh Ali Khan
"Mujhe Tum Yaad Ate Ho";"Sham Savere Vol.19"所収

 頭上から光が差してくるのがわかるような気がした。音によってそんな気がしたのは初めての体験だった。
 イスラム国であるイランでは大衆娯楽のための民俗音楽は禁じられている。そして、ヌスラットの歌は宗教歌である。あの光のような陶酔感はたしかに宗教家とするにふさわしいだろう。そしてなによりすばらしいのは、この曲が神の存在や宗教心を僕には押し売っては来ないことだ。歌詞がまったく判らないせいもあるだろうが、彼の歌も圧倒的な演奏も、ひたすら神への愛と信仰を神に直接歌い上げているように僕には感じられる。僕はその傍観者でしかない。だから僕はその姿勢に共感できるし、心を打たれるのだ。
 宗教というものに日本人は特に抵抗を抱くし、イスラム教にはまた多くの偏見を向けているだろう。でも、それはまた報道の一面性による誤解も多く含んでいるはずだ。どんな宗教であれ、人が神への愛を心から藝術に昇華したとき、僕らはそこに美を見つけざるを得ない。そうして、偏見に凝り固まった自身をいったん脇に置き、あなたにも頭上からの光を感じてほしい。そして、ジョン・レノンが「夢想家だとみんなは笑うかもしれない」と意味したものは何なのかを考えてほしい。僕はイスラム教勧誘人ではない。ただ、真剣に愛を歌う人をささやかながら称えたいだけだ。




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