「世紀末」の言葉が躍った90年代。物心ついてからの10年区切りの間で、アイドルらしき存在がまったくオーヴァーグラウンドに顔を見せない時代だった。主に10代の若者を対象にした異性アイドルの存在は、身近な恋愛感情の第一歩となっていたはずだった。特に女の子たちの男性アイドル熱はこれまですさまじい勢いがあったはずだった。この時期、少女漫画も同じような境遇を迎えていたが、ヴァーチャルより現実を選んで街に飛び出したティーン女性たちは、より現実的で生々しい同性の存在を見出していった。のちに「カリスマ店員」などともてはやされることとなる現象も、すべてはここから始まった。

 ジュディー&マリーのユキは、同世代からの圧倒的なシンパシーに支えられたパンク少女だった。一聴しただけではただのビート・ポップスになり下がってしまいそうなバンドの音に80年代への回帰を聴きとってもおかしくはなかったが、ユキの舌足らずでロリータ色の強いヴォーカルは、数ミリ先でもう壊れてしまいそうな震える少女の精神を体現していた。メロディがポップであればあるだけ、彼女はライトアップされた街路樹のツリーにもの言わずぶら下げたれたままの薄汚れた人形に見える。虚飾性の高い90年代にお似合いのイコン、それがユキだった。

 まるでマニエリストたちの復活祭のごとき90年代が過ぎ去り、彼女はファースト・ソロ・アルバムで「96db」という曲を収録している。この曲で聴かれる彼女のたたずまいは、宵闇のワン・ルームに膝を抱えてただ時をいたずらに眺めている小さな小さな女性の本音。重く垂れこめる分厚いシンセ音が孤独な旋律を奏で、男とはまた違った、女の深い闇を覗くとき、そこに見える絶望とは逆に、心根をさらけ出されたからこそ見える、本当の意味でのコミュニケイションを感じ、またそのパラドックスに一筋縄ではいかない現代という怪物をひしと感じ取る。


ALBUM

PRISMIC


my best song 96db
my best album PRISMIC
my best lyrick 96db
my best music デイドリーム
my best arrange 96db




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