かつて大阪のアメ村に「ラングーン」という店があった。ここはのちにワールド・ミュージック・ブームに乗って"GARDEN"と改称され、オシャレな店に生まれ変わったが、ラングーンの時代には客も少なく、作り付けのような風情でトタン板が貼られていたりコンクリートが剥き出しにされたままだったりする店内はアジアを臭わせるものだった。この店ができたことをきっかけに、僕は「音楽による世界旅行」を思い立って世界各地のLPやカセットを集め始めたのだが、そのアイデアが浮かぶまで、この店は「足は運ぶけれど、遠い存在」だった。どのアルバムがいいのか、情報もほとんどないし、ジャケ買いをしようにもそそられる感性の基準さえなかった。それだけ「洋楽」「邦楽」という世界の中だけでしか音楽を聴いてきていなかったのもまたたしかだった。

 ずっとポピュラー音楽を聴きつづけていると、たまに自分が個人的に注目したジャンルがのちに時代の潮流に乗るようなことがある。沖縄ブームとワールド・ミュージック・ブームが僕の場合はそのひとつだった。
 ある日僕は唐突に沖縄音楽を聴いてみたくて仕方がなくなる。翌日学校帰りにラングーンで初めて買ったレコード、それが「喜納昌吉&チャンプルーズ」だった。

 那覇で念願の彼らのコンサートを見たのは、ずっと後、1996年のことだった。初めて見る喜納昌吉はよく言われるオーラのようなものを放ってすごい存在感だったし、途中の三線速引きのソロ・セット途中で弦が切れても彼の余裕綽々とした態度に沖縄のゆったりとした穏やかさを感じたりもした。バンドの演奏力だって、毎晩のステージで培われているものだけに強固だった。でも、正直に言うと、生きているだけで、歌っているだけで祝祭であるとでも言いたげなファースト・アルバムやセカンド"BLOOD LINE"での躍動は聴き取れなかった。メンバーが当時とは変わっていたせいもあるだろう。ただ、喜納昌吉はただの音楽家から言葉の人、あるいは存在そのものが世に問われるような人間になっていた(のちに、彼は議員として活動するようになった)。投獄されたり、予知能力のような才能をもてあましたりインドにバグワン・シュリ・ラジニーシを訪ねて弟子になったり、本当に様々な紆余曲折を経て彼は人間としての生を謳歌するような現在を手にしたのだろうと思う。ただ、それが僕たち一介のリスナーにとって吉報なのかどうか、複雑な思いがするのだ。

 ラングーンは資本主義が臭うきれいめな内装のGARDENに生まれ変わったのち、数年前に閉店していた。産業というのはそうした流れにあるものだ、と彼は言うかもしれない。ただ、僕にとっての喜納昌吉は、あのときのまま、ラングーンのトタン板に溌剌とした三線の音を響かせている「美しい流行歌」のままでいる。


ALBUM

喜納昌吉&チャンプルーズ   1977年
A面
@ハイサイおじさん
Aうわき節
Bレッドおじさん
C番長小
D東崎

B面
@すくちな者
Aいちむし小ぬユンタク
B馬車小引んちゃー
C島小ソング

BLOOD LINE   1980年
A面
@じんじん
Aアキサミヨー
B花のカジマヤ
Cニライカナイ
Dイヤーホイ

B面
@すべての人の心に花を
Aミミチリ坊主〜ダンジュカリユシ
Bクレージーカチャーシー
Cヤンバル
   1982年
A面
@ARU NAIKO
Aゾルバでブッダ
Bクサムニ・グンダ(大言草子)
Cイヤホイ
Dセレブレーション(祭)

B面
@風
Aニライカナイ(遙かなる国)
Bアイヌ・プリ
Cサバニ(丸木舟)
D花
The Cerebrations   1983年
A面
@COSMIC DANCE
AARU NAIKO
Bニライカナイ(遙かなる国)
C風
Dサバニ(丸木舟)
Eゾルバでブッダ
Fインプロヴィゼイション〜ハイサイおじさん
Gアルタイコ

B面
@クサムニグンダ
Aセレブレーション(祭)
BDOOR
Cイヤホイ
Dアイヌ・プリ
E花
Fアンコール/アイヌプリ

ニライカナイ PARADISE   1990年
@カイサレー
Aニライカナイ祭り
Bセレブレーション・レゲエ
C星降る夜に
Dさらふりむん
Eガイア GAIA:母なる大地
Fシミルスルヌガ
G風
H渡地(わたんじ)情話
I流れるままに
Jハイサイくどち
K毛遊び(もあしび):ナークニー〜海ぬチンボラー〜唐船(とうしん)ドーイ
Lサマーディー:花風(はなふ)

Earth Spirit   1991年
@ドンドン節
Aタンチャメー
Bアース・スピリット
Cチルダイ
D命のまつり
Eセイヴ・ザ・マングローブ
Fコザ・シティー
Gクバラパーズ・クイチャー
Hボーダーレス・ジンジン
I想い
J永遠なるエクスタシー

チャンプルーズ ルネッサンス   1992年
@花
Aゾルバでブッダ
B東京賛美歌
Cサバニ
Dアイヌプリ
E流れるままに
Fハイサイおじさん
G浮気節
H島小(しまぐわ)
I東崎(あがりざち)
J遥かなる国

In Love   1992年
@ヒヤミカチ節
A赤田首里殿内
Bマイトレィヤー
C謝花昇
Dジャンピング・スルー
E蝶小
Fしむさゆたささ(愛は蓮華)
Gハッピー・フラワー
Hカシマサヌー
Iイン・ラヴ
Jピリカ

Rainbow Movement   1993年
@森の人よ
Aアリラン
B地球の涙に虹がかかるまで
C騒乱節
D島小(しまぐわー)ロックンロール
Eまぶやーまぶやー
F愛は私の胸の中
Gてぃんさぐぬ花
H国頭(くんじゃん)サバクイ
I泣くなかなしー小(ぐわー)

火神   1994年
@滝落し
Aすべての人の心に花を
Bサーサー節
C火神
Dうるしるむん
E与那国小唄
F久高マンジュウ主
G石笛のうた
H月ぬ夜
I未来へのノスタルジア
Jアカインコ
すべての武器を楽器に   1997年
@ハイサイおじさん
Aいち虫小ユンタク
Bサバニ
Cイヤホイ
D島小
Eすべての武器を楽器に
F流れるままに
G花
H少女の涙に虹がかかるまで
Iアジアの花

赤犬子   1998年
@白鳥小(しるとぅやぐゎー)
A屋嘉節(やかぶし)
Bあやぐ
C白雲節(しらくむぶし)
D帽子(ほーし)くまー
E白浜節
F花心(はなぐくる)
G渡地(わたんじ)情話
H県道節
I新・時代の流れ
Jてぃんさぐの花
K海のチンボーラー
L谷茶前(たんちゃめー)
Mヒヤミカチ節

忘てぃやういびらん 忘てぃやないびらん   2004年
@金網のない島
A神戸からの祈り
B憲法行進曲
C山を見ても星を見ても
D安里のタンメー
E花〜すべての人の心に花を〜(三線バージョン)
ベストオブ オキナワ三線ハッピークリスマス   2008年
@赤鼻のトナカイ
ARockin'Around The Christmas Tree
Bジングル・ベル
Cきよしこの夜
Dサンタが街にやてくる
Eウィ・ウィッシュ・ユー・アー・メリークリスマス
FHappy Xmas(War Is Over)
G聖者が街にやってくる
Hホワイトクリスマス


my best song すべての人の心に花を
my best album 喜納昌吉&チャンプルーズ
my best lyrick すべての人の心に花を
my best music 東崎
my best arrange ハイサイおじさん




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