レコードを通じて「ライヴよりもスタジオ・レコーディング作品のほうが音のマジックが楽しめていいや」と思っていた僕は、コンサートやライヴになかなか興味を持つことができなかった。そんな折、友人が岡田有希子のファンで、コンサートに誘われた。チケット代がタダだと聞き、それだけの理由で彼と足を運ぶ。そこでは男たちの熱い声援が飛び交い、彼女のファンでもなかった僕は取り残されたような気分を味わった。ただ、「アルバムの中で一番好きな曲です」というMCに続いて「彼はハリケーン」が始まったときには自分なりに合点がいった。友人から「岡田有希子は勉強の面でもすごくて、それでもアイドルの道を選んだんだ」という話をさんざん聞かされていたが、だからこそひと夏の恋に憧れる岡田有希子の逃避行的な気持ちがわかるような気がしたのだ。

 「リトル・プリンセス」を売り言葉にブレイクした彼女は、実際のところ、シングル4枚目あたりから急速に存在感をなくし、大人への脱皮をうまくできないでいると感じていた。そう、友人に感化され、僕も彼女の動向を少し気にし始めていたのだ。彼女はこの道を選んだことを後悔してはいないのだろうか。そんな詮索も忘れそうになっていたころ、あの事件はやってきた。

 行きつけだったレコード店「レスポック」でいつもの笑顔を見ようと店に入るなり、Iさんが飛んできた。「大変だよ! 岡田有希子が自殺したんだ!」。彼は岡田有希子のシングルとLPのコーナーに、急遽こしらえた「追悼」の文字を貼りつけていた。その場で公衆電話から友人に連絡を取ったことは言うまでもない。

 結局、岡田有希子はアイドルにはなりきれなかったのだと、僕は今でも思っている。歳の離れた俳優との交際破局が原因だとか、ノイローゼ気味だったとか、いろんな噂が流れた。そして時を経て、Zardの坂井泉水が亡くなって、懐メロでしかなかったはずの、僕らの青春期のあの曲たちが街角で流れたりもした。死んで名声を得るのは、有名人としては仕方のないところかもしれない。それが悲劇的でミステリアスであればなおのこと。しかし、こうした軽薄な世にあって、岡田有希子は「自分のために生命を決定した」と言えるだろう。アイドルは偶像でしかない、そんなシンプルなことを身をもって教えてくれたのは彼女だった。

 あれからもう幾年流れたろう。不毛の時代を経て、アイドルはより完璧にアイドルとなった。しかし、その一方で傲慢な発言でバッシングを受けたり、未成年ながらの飲酒が発覚したりと、相変わらず芸能情報は忙しい。でも、もういい加減気づくべきではないのか。人は人でしかないことを。


ALBUM

シンデレラ
贈り物
Fairy
十月の人魚
贈り物U
ヴィーナス誕生
SINGLE

ファースト・デイト
リトル・プリンセス
恋、はじめまして
二人だけのセレモニー
Summer Beach
哀しい予感
Love Fair
くちびるNetwork
花のイマージュ(未発表)



my best song くちびるNetwork
my best album シンデレラ
my best lyrick 彼はハリケーン
my best music 
my best arrange




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