レコード大賞という番組を見ていて、これほどワクワクした気持ちになったのは、これが最初で最後のことだった。

 それは何も、僕がこの番組を好かないわけなどということではないし、かといって息せき切ったデッド・ヒートを繰り広げて強豪ノミネート曲同士が鍔迫り合いを演じた年だったというわけでもない。それどころか、この年は、どこをどう考えても「ルビーの指環」以外の受賞はありえなかった。
 誰でも、「青年」の門口をたたく音を聞くときがくる。テレビで見聞きする回数に正比例してヒット曲が好きになったりアイドルのダンス・ステップを真似たりする子供達も、いつかは「自分の好きな曲」を聞こうとするようになる。マスコミから与えられたものをただ食べるのではなく、自分が選んだ料理を注文しようとするとき、人はたぶんそれを大人への門口だと思うのだ。僕をその門口に案内したのが彼、寺尾聡であって、その年の暮れのレコード大賞受賞の瞬間に、自分の「この人の歌が好きだ」という感性が世間といういわゆる大人社会とリンクした、という実感に僕は興奮したのだった。

 寺尾聡には解りやすい「大人」があった。それまであまり接したことのなかった低い声のヴォーカル。AORと呼ばれているのを知らなかった落ち着きとクールネスを前面に押し出した曲想とアレンジ。松本隆の書き下ろした街を吹く風のような歌詞。「ルビーの指環」「Shadow City」「出航-SASURAI-」と立て続けに3曲もトップ・テン入りするという快挙とともに、テレビで「歌のベスト・テン」などにかじりつきだった僕は、すっかり彼の「大人」にやられていた。そして、トレンチコートなどに憧れた少年は、いい歳になった今でもステンカラーのコートさえ着るのをためらうくらいカジュアルな男になっていた。


ALBUM

リフレクションズ
アトモスフィア



my best song シャドー・シティー
my best album リフレクションズ
my best lyrick ルビーの指環
my best music シャドー・シティー
my best arrange Havana Express




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