Tin Pan Alley

 大滝詠一の「ナイアガラ・ムーン」は、高校生だった僕のスーパー・フェイヴァリット・アルバムだった。そのときにはセンスの良さという以上の言葉が見つからなかったが、時とともに、リバーヴを抑えたドライな録音や、言葉を音としての機能に徹する歌詞の扱い方、あっけらかんとしたパロディーのあり方などに魅力を感じていたことが次々と明らかになっていった。そして2005年には30th Anniversary Editionが発売され、すばらしいマスタリングによって、このアルバムにティン・パン・アレーがどれだけ息吹を送り込んでいるのかを痛感することとなる。

 1980年代は、意匠の時代だという印象を、僕は持っている。ポピュラー音楽的にも、パンクが一段落したあとに雨後の竹の子のように出てきたニュー・ウェーヴやギター・ポップ、さらにはテクノなどのミュージシャンには、構築の中に技巧の粋を込めたプログレを完全に通過した観点から、一種のアマチュアリズムを自らの音楽性に溶け合わせた作風をもつものが多く、僕はそんな空気の中で青春時代を送ってきたせいか、自身のバンド活動では「技術より発想力」を第一に考えてきた経歴がある。しかし、バンド活動を完全にやめてしまってから僕が耳にするようになったのは、いわゆる技巧派ミュージシャンの演奏だった。打ち込みやサンプリング演奏ではどうしても超えることのできない、演奏への気概の高さとしなやかなグルーヴ感、バンドとしての高揚感。本当の意味で歌心を支えるのは、こうした気迫のバックではないか、そう思うようになった。

 ティン・パン・アレーは固定したメンバーでのバンドではない。なのに、その名で参加するミュージシャンの誰もが際立った演奏力・歌唱力を有する。デリケートでいて情熱的な佇まいは、2000年を超えた今も燦然と輝いている。そうした中でもとりわけ、林立夫のドラムと細野晴臣のベースは圧倒的な存在感を誇る。残る二人のレギュラー・メンバーである鈴木茂と松任谷正隆が、基本的にアレンジャー的発想のもとに音を組み立てようとしているのに対し、細野と林は歌の邪魔にならない範囲の中で、楽器に「歌わせている」と言えるだろう。また、林のドラムはどこか「これ!」という部分に必要最小限に見せ場を作ることに成功している。それまでためにためているから、瞬発力には身震いがする。一方、演奏力の高いベーシストは独自の音を見せ場としするため、音作りにせよ演奏自体にせよ主張が多いことがよくあるが、細野はあくまで控えめに屋台骨を支える柔らかな音でグルーヴさせてしまう。

 調和のとれたアグレッシヴが彼らの音楽には渦巻いている。そんな脈動を止め、テクノというマシーン・ミュージックの先駆けを作ったのもまた細野晴臣であることは、運命の皮肉のようでもある。


ALBUM

キャラメル・ママ   1975年
A面
@Caramel Rag
AChooppers Boogie
Bはあどぼ いるど町
C月にてらされて
DChoo Choo Gatta Got '75

B面
@She Is Gone
Aソバカスのある少女
BJackson
CYellow Magic Carnival
DBallade of Aya

Tin Pan Alley 2   1977年
A面
@明日あたりはきっと春
A薔薇と野獣
B野生の馬
Cろっかばいまいべいびい
D心もよう

B面
@航海日誌
Aポケットいっぱいの秘密
B結婚しようよ
C妹

メルヘン・ポップ   1979年
@犬のおまわりさん
Aドレミの歌
Bかわいいかくれんぼ
C猫ふんじゃった
D10人のインディアン
Eお使いアリさん
F森のくまさん
Gげんこつやまのたぬきさん
Hクラリネットこわしちゃった
Iおもちゃのチャチャチャ
J赤とんぼ
K春よ来い
Lたき火
Mしょうじょう寺のたぬきばやし
N大きな栗の木の下で
O赤い帽子 白い帽子
P夕やけ小やけ
Qむすんでひらいて

Tin Pan   2000年
@Fujiyama Mama
AQueer Notions
BStarlight Strut
CFlying Pick Blues
DBon Temps Rouler
EBeen Beat
FTravellin' Mood
G76 Tears
HSoylent Green
IFlowers
JHand Clapping Rhumba 2000
KGrowth



my best song She Is Gone
my best album Caramel Mama
my best lyrick ソバカスのある少女
my best music あの日に帰りたい
my best arrange ハリケーン・ドロシー




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