手垢がつくというのは、日本では本当に恐ろしいことである。「ユーミン」という名を口走るとき、僕らはあの80年代のバブルの鼻持ちならない「ハイソ」ぶりを思い出して一人で身震いしたりする。確実に彼女はあの時代の寵児であった。そして、コマーシャルとして彼女自身がそのパブリック・イメージを牽引したことも事実ではある。でも、多くの「時代のリーダー」が実際にはそうではないように、松任谷由美の音楽の実像もバブルの蓑の向こうになど決してない。

 以前フリーペーパーにも書かせていただいたことだが、結婚前の荒井由美時代の彼女の声には、キャロル・キングのように決して上手くはないけれど技巧に走らない素直な伸びやかさと、その声でなくてはならない必然性があった。ハイ・ファイ・セットが彼女の曲を数多くカヴァーして美声を聞かせているが、「ベルベット・イースター」や「曇り空」などは荒井由美でないと出せない独自のくぐもりを持っている。その後、彼女は私小説的なスタイルを改めて小説的に架空の世界を飛翔するようになるが、この「くぐもり」はずっと温存されたままで、例えば1994年の作品「春よ、来い」でも彼女らしい声のベタつきが和風のテーマとのマッチングを見せる妙味を活かしている。

 また、近作になるほどに影をひそめてはきているが、「歌謡曲」に属する一歩手前のところで、斬新なコード進行を大胆に用いたりもしながら「良質なポップス」であろうとする彼女の曲作りの上手さは抜きん出ている。「中央フリーウェイ」や「あの日に帰りたい」などはその代表となろう。

 バブル時代にOLが圧倒的に彼女を応援するきっかけになったのは、たぶんなにもリアリティーを感じることのできる歌詞の巧みさや誰もが驚くステージ・セッティングの豪華さだけではないだろう。女性は自分の好きなものに対しての魅力を「かわいい」とかなんとか、曖昧な言葉でしか語りはしないが、いつの時代もそのエッセンスの部分だけで先駆的なものを見抜き、惜しみないエールを送る。


ALBUM

ひこうき雲
ミスリム
コバルト・アワー
14番目の月
紅雀
流線型'80
オリーヴ
悲しいほどお天気
時のないホテル
サーフ・アンド・スノウ
水の中のASIAへ
昨晩お会いしましょう
パール・ピアス
リ・インカネイション
ボイジャー
ノーサイド
DA・DI・DA
アラーム・ア・ラ・モード
ダイアモンドダストが消えぬまに
デライト・スライト・ライト・キス
ラヴ・ウォーズ
天国のドア
ドーン・パープル
ティアーズ・アンド・リーズンズ
U-miz
ザ・ダンシング・サン
カトマンドゥ
カウガール・ドリーミン
ユスアの波
フローズン・ローゼス
アケイシャ
ウイングス・オブ・ウインター,シェイズ・オブ・サマー
ヴィヴァ!6×7
ア・ガール・イン・サマー
そしてもう一度夢を見るだろう
ロード・ショウ



my best song 中央フリーウェイ
my best album パール・ピアス
my best lyrick 卒業写真
my best music 守ってあげたい
my best arrange 中央フリーウェイ




◆「プレーン・ジャパン」に戻る









SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送