ジェイムズ・テイラーの「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」を毎日聞いていた頃のことだ。地下街は閉まる間際の時間で、もうほとんど人通りがなかった。まだ開いている店もあちらこちらでガラガラとシャッターを下ろす音を立てていた。そのとき地下街のBGMがキャロル・キング版の「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」になった。そのときはまだ彼女のヴァージョンを耳にするのは初めてのことだった。
 やけに淋しい、痛々しい歌と演奏だった。ジェイムズはこの曲を地味だけれどほっこりとした生ギターと歌で温かみを出していた。そして、60年代というあまりにも眩しく矢継ぎ早なお祭り騒ぎが終わったあとの傷つき疲れた心に染み渡ったというこの曲をめぐる評を、後追いの僕らに頷かせるだけの説得力を持っていた。キャロルも同じように時代に受け入れられたシンガー・ソング・ライターだった。朴訥とした歌い方も女性らしいまろやかなタッチのピアノも、そして夫となるチャールズ・ラーキーのしなやかで自由で滋味豊かなベースも「癒し」感覚を思い起こさせるものだった。
 だが、この曲ではキャロルは恋人が去ってゆく曲などよりもずっと悲しい面持ちで、短くフレーズを切るように、彼女にしてはエモーショナルに歌い、ストリングスと歩調を合わせて震えるようなピアノ・フレーズを繰り出している。思えば、ステロタイプな別れの歌より、呼び合えばいつだって会える友の存在のほうが、どうしようもない闇の中では大切だったりする。ただ、そういうことは、異性が遠くで輝いて見え、その人のことを思うだけで息が詰まるような若い頃には気がつかない。そして、何でもない、一見満ち足りた普通の日常生活の中に潜む孤独を垣間見ることもない。
  冬の訪れを告げる地下街を吹き抜けてゆく風に背を丸めながら、恋人と僕はこたつのある部屋へと足を急がせた。


ALBUM

Now That Everything's Been Said (The City)
Writer
Tapestry
Music
Rhymes &Reasons
Fantasy
Wrap Around Joy
Really Rosie
Thoroughberd
Simple Things
Welcome Home
Touch the Sky
Pearls
One to One
Speeding Time
City Streets
Colour of Your Dreams
In Concert


my best song Nightingale
my best album Fantasy
my best lyrick You've Got a Friend
my best music Been to Cannan
my best arrange Nightingale


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