タイの街並み


 ひとことで言ってしまえば、タイの街並みはどこも似たりよったり。
北のチェンラーイと南のハジャイの写真を一緒に並べられても、そこに仏像の姿やモスク、あるいは道行く人の姿が写っていなければそれと言い当てるのは難しい。
でも、だからこそ法衣をまとっている僧侶も、布に髪を隠す女たちも同じような街並みを歩いていることが愉快だ。

 タイ人の多くは自身のことを「チェンマイ人だ」とか「プーケット人だ」などと、地方の名を用いて語らない。
国王を愛し、タイという国を愛する「タイ国民」だと思っている。
そんな国の地方の姿が北から南まで似通っているのは至極当然だといえる。
その「タイ式」を追いかけながら、僅かに垣間見える地方色にも目配せして、少し様子をのぞいてみたい。


1 建物

 タイ人がよくバンコクのことを説明するのに、「タイには2つの国がある。タイとバンコクだ」というものがあるが、たしかにバンコクは大都市で、チェンマイやコラートなど、それ以外の街との規模の差は圧倒的である。
そして、さらにこの10年でかなりの速度で変貌しつづけているバンコク。
高層ビルの建設が同じソイの中でもあちこちで見受けられ、BTS延伸部なども建設中。
立体交差化が進み、雨季名物だった道路の冠水も減った。
バンコク随一の百貨店となった高級志向のサイアム・パラゴンがオープンしたかと思えば、破格のフロア面積を誇るワールド・トレード・センターがセントラル・ワールド・チッドロムになったり、その向かいである旧大丸跡地にビッグCが移転してイメージを刷新したり、バンコクのモードををリードしてきたサイアム・センター、マーブンクローン・センター(MBK)が大改装を行ったり、特設ステージやイヴェントがバンコクのシーンを牽引してきたサイアム・スクエアのセンター・ポイントが前出セントラル・ワールドに移転したり、BTSサイアム駅周辺の著名なショッピング・コンプレックスだけでも、こんなにも変動した。

 高層化したビルが並ぶ中に、昔ながらの民家がまばらになってきた地域が、スクンヴィット界隈では多くなった。
この落差には、「アジアの絵」を感じる。古い建造物がその国ならではの味を出しているところへ、新しく無機質だがインパクトのあるビルが一角を構え、見事なコントラストを描き出しており、こうした風景を切り取った写真は、アジアを紹介する書籍で散見される。
こうした庶民的な建物もそう遠くないうちに取り壊されてしまうだろう。
香港やマカオが中国に返還される前に、とお出かけになった方なら、同じような気分で今のバンコクを目にとどめておくのも一考ではないかと思われる。


A 日本ではお目にかかれないスタイル

日本は地震の多い国であり、また、建築基準に関しても非常に厳しいので、建築物に関しては制約が多いが、タイは国が造山帯上にないうえ、金持ちが牛耳っているので、日本人には目をひく建物が多い。

・とにかくでかい! セントラル・ワールド・チッドロム
フューチャーパーク・ランシット
シーコン・スクエア
・とにかく細い! バイヨーク2
バイヨーク・タワー
・とにかく薄い! フォーチューン・タウン
・不思議なシェイプ! ウォーターフォード・ダイヤモンド
フィフティー・フィフス・タワー
・不思議なモニュメント! エラワン・ミュージアム


B 一般的な建物

 タイでやたらと見かけるのが、3〜4階建てになっていて、1階部分が店舗にできるスタイルの建物。
タウン・ハウスと呼ばれる。商売をする人口の多いタイならではの造りである。上階は住まいになっていることが多く、バリア・フリーとは相当縁遠い、階段を上下しながらの生活をしている。
このスタイルだと、クーラーを設置するには各階すべてというコストを抑え、よく利用する2階にだけということも多いようだ。
1階正面は両横から引っ張る網型シャッターになっており、その上には赤地に金文字でタイ語・中国語・英語での商店名表記が見受けられるだろう。



2 道

 バンコクの渋滞はつとに知られているところ。
信号の少なさや連携の悪さなどもあるが、道の造りが最大の原因。大通りが少なく、ソイと呼ばれる通りはもともとが公道として造られたものではないだけに細くて、しかも袋小路になっていることが多い。
信号も少なく、あったとしても連携が取られていない。
やたらと三差路が多い。
十字路の信号は片側だけが青信号になる方式が多く、待ち時間が非常に長い。
Uターンが多いのに、そのための道幅に余裕のないことも多く、車のUターンのたびに車線がすべて塞がれることもしばしば。
これで渋滞が起きないのがおかしい。
ただし、休日は車の往来が少なくなる。
ソンクラーン(タイ正月)や大型連休の中日などには、ここはバンコクなのかと勘繰るほどスカスカ状態。

 歩道の方は、路面のタイルがガタガタになっていたり、店の商品が道に張り出していたり、あるいは屋台・電話ボックス・電柱・掲示物などが混在していて、すんなり通れることが少ない。
また、、自転車レーンの車線が引かれている場合でも車道との段差があり、車椅子を利用する人にとっては使い道のない状態である。
ただ、現在バンコクでは毎週月曜の屋台営業を禁止しており、特に夜にはいくぶん歩きやすくなっているほか、市内の主だった繁華街からタイルの改装工事で以前とは比較にならないくらいに安定したブロック埋め込みを図っている。
携帯電話普及に伴う電話ボックス撤去も見られるほか、狭くても歩道を設置しようという動きもあり、ここ数年で格段の進歩を遂げている。

 バンコクでは正直なところ、日本よりかなり気を張って道を利用しなければならないだろう。



3 屋台

 



4 市場やショッピング・センター

A 市場
 市場は卸売感覚に近い大型のものから、大きなソイの入口あたりにあることの多い個人商店の集合型のものまで、さまざまな形で存在する。
バンコクやチェンマイでは、家具が多いところや花を大々的に扱っているなど、各市場に専門性が高い場所もあったりする。

 肉を扱う店は置き棚が白いタイル張りになっていることが多く、汚れを洗い流すのが楽になっている。
その上には肉の塊が鍵針状のでっかいフックにぶら下げられていて、初めてこういうものを目にした人はぎょっとするかもしれない。
だが、我々が普段食しているものがどういう形を経て口に入るゴールを迎えているのかを知っておくのはよいことではないかと思う。

 大型市場内部の外観は日本のそれと大きく印象が違わない。
いつでも水に濡れた路面に人々が忙しそうに行き交い、中央あたりには卸売りのための棟が並んでいる。
いくつか異なる点としては、まず、屋根のないところが多いこと。
そして、日本で活躍しているフォークリフトがなくて、車やバイクがじかに乗り入れをしていること。
また、個人で買い付けをしている人の姿を多く見かけること(僕もその一人です)。
店の手伝いをしている子ども・若者の姿が多いこと、主な出入り口にトゥクトゥクが客待ちをしていること、といったところ。

B ショッピング・センター
 百貨店に関しては日本同様、単体のものよりも、専門店街を有したショッピング・コンプレックスが多いのだが、驚くのはその規模。
とにかく大型の店舗が多い。
日本では大店法の規制にかかってしまうだろうレヴェルのものがけっこう見受けられる。
金持ちがどこまでも権限を守られているこの国ならではの現象だ。

 中規模の店としては、大型スーパーがある。
テスコ・ロータス、カールフール、ビッグCがタイでは有名。
これらの店は店舗の形が日本のホーム・センターに似たような作りになっていて、駐車スペースが広く取られ、店の多くは2階建てになっている。屋根がトタンになっていて、建設コストを抑えた造りである。

 日本での小型スーパーにあたる店も多く、スクンヴィット地区ではトップス、ヴィラ・マーケット、フードランドなどが著名。
こちらは日本とほとんど外観上の違いがない。

 


5 公共施設

 

〜つづく〜

6 地域性


7 タイの中の日本人として、街を歩く



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